メンタルヘルスマネジメントの重要な取り組みとしてラインケアが挙げられます。
ラインケアとは、厚生労働省からの指針「労働者の心の健康の保持増進のための指針」にある4つのケアの一つで職場の管理監督者が部下に行うメンタルヘルス対策を指します。4つのケアはどれも大事ですが、特に職場の責任者である管理監督者が担うラインケアは最も重要な取り組みの一つであり、また最も効果的なメンタルヘルス対策とも言われています。
ラインケアでは個と組織の2つの視点からの取り組みが重要です。
個のかかわりでは、業務や人間関係を把握し、「いつもと違う」部下に早期に気づき、心身の不調が疑われる部下には声を掛け、業務状況や健康状態について相談を受ける立場としての役割が求められます。
NIOSH(米国立労働安全衛生研究所)の職業性ストレス研究においても管理監督者(上司)は、同僚や家族と並んでストレス要因に対する緩衝要因として部下のストレス反応を和らげる心強い存在とされています。
次に組織へのかかわりでは、適切なマネジメントやリーダーシップを発揮し、働きやすい職場環境づくりを通じて組織のワークエンゲージメントを醸成し、結果として、メンタルヘルス不調者を発生させない組織作りを行うことができます。
こちらもNIOSHの職場健康モデルでマネジメントや組織風土などの組織特性が組織の健康に影響し、さらに健康や満足度と業績・生産性には相互作用があることが明らかにされています。
では、個と組織への関わりでどのような取り組みや実践が有効でしょうか。
様々あると思いますが、管理監督者の方には次の4つの取り組みをお勧めします。
1.アサーティブなコミュニケーション
2.アンガーマネジメントの実践
3.心理的安全性のある組織づくり
4.職場環境改善とワークエンゲージメントの醸成
個の関りでは、業務指導や相談等において部下との適切なコミュケーションやアンガーマネジメントなどの感情コントロールのスキルが必要です。
また、組織の関りでは心理的安全性のある組織づくりが欠かせません。そのような組織を前提として職場環境改善などに取り組むことがワークエンゲージメントの醸成につながります。このようなポジティブな取り組みが不調者を発生させない予防的ラインケアと言えるものです。
次回からは4つの取り組みについて詳しく解説していきます。