【コラム】メンタルヘルスマネジメント第2回
~ラインケアのコミュニケーション~

ラインケアを効果的に進めるためには上司と部下、お互いの良好なコミュニケーション、つまりアサーティブなコミュニケーション(以下アサーションとします。)が必要です。

アサーションとは、「自分も相手も大切にする自己表現」という意味を持ったコミュケーションの考え方や方法です。

例えば、部下に仕事の依頼をする場合、アサーションの考え方では、「依頼したいこと」を強い態度で一方的に部下に命令したり押し付けたりすることを「攻撃的自己表現」といいます。逆に部下側からは、頼んでもいいことや、断っても良い場合でも引き受けてしまったりする言動を「非主張的自己表現」といいます。 アサーションはそのいずれでもなく、頼み事があればそれを適切に伝え、相手から引き受ける返事も引き受けられない返事もありえると考える自己表現です。

アサーションは双方を大切にするやりとりを意識し、その試みを通して双方が理解し合い、葛藤があるときは歩み寄って物事を進めようとするコミュニケーションなのです。

1.自分のコミュニケーションの特徴を把握する

アサーションを実践するうえで、自己のコミュニケーションスタイルを知ることが大事です。責任感や正義感が強く、過度に自己や他者に厳しい傾向があるか、又は、人の評価や期待に沿うことを気にしすぎたり、常に遠慮がちな傾向があるかなど、自己のコミュニケーションスタイルを点検してみましょう。

2.自分も相手も大切にした伝え方ができる

次にアサーションを実践する手法としてDESC法を活用しましょう。

DESC法とは、「Describe:描写」「Express/Explain:表現・説明」「Specify/Suggestion:要求・提案」「Consequences/Choose:結果・選択」の4つの頭文字を取ったものです。

構造化された手法ですので、トレーニングで誰でも身に着けることができ、適切にアサーションが実践できます。自己の考えを主観で相手に伝えると、往々にして決めつけになりがちですが、①客観的な事実に基づいて、②自己の考え、気持ちを伝えることを意識していただくだけで相手とのコミュニケーションが随分違ったものになるでしょう。

3.部下の話に耳を傾けることができる

最後に「聴くアサーション」も心がけましょう。アサーションは適切な自己表現や主張のみが強調されるきらいがありますが、コミュニケーションは相互のやり取りで成り立っていますので、相手の気持ちを聴くという積極的で能動的な行為もアサーションなのです。

相手に関心を持てば相手のことがよくわかって良好な関係づくりにつながります。

アサーションはラインケアを実践するうえで、必要不可欠なコミュニケーションのあり方なのです。

著者

宮川 浩一(宮川 浩一)- Koichi Miyagawa

株式会社NextEAP
代表取締役

一般社団法人中小企業EAP普及推進協議会
代表理事