「小規模事業所のメンタルヘルス対策②」

 「小規模事業所のメンタルヘルス対策①」で、メンタルヘルス対策が働きやすい職場づくりや生産性の向上にもつながるということを書かせて頂きましたが、具体的にこれらがどのようにつながっていると思いますか?ある職場を題材にこの疑問にお答えしたいと思います。

 例えばこんな職場があったら、どう対応しますか?「突然出社できなくなり、心療内科で抑うつ状態との診断を受けたAさんに対して、総務担当者がヒアリングをしたところ、『職場に怖い先輩が複数いて、ちょっとしたミスをしつこく非難されるなどのことが日常的に起きている。管理監督者であるB課長は同状況を見て見ぬふりをしている。1年間は頑張って勤めていたが、次第に出社するのが怖くなった』とのことでした。また、職場はお互い協力する雰囲気もなく、人を採用してもすぐに辞めてしまい、慢性的な人出不足につながっているようです。」

 このようなケースに産業保健専門職である保健師が関わると次のような対応ができます。

・総務担当者から相談を受けた保健師は、Aさんを含む職場のメンバーにヒアリング、複数の従業員からAさんと同様の職場のいじめに関する訴えが寄せられました。

・B課長の上司にあたるC部長に、メンバーからのヒアリング内容をフィードバック、今後の職場としての対応方針(以下)をアドバイス、キーパーソンとして職場風土改善に関わってもらうこととなりました。

①職場全体を対象にハラスメント研修を実施、会社としてハラスメントを許さないというメッセージをC部長から発信してもらいました。

②B課長に替えて、コミュニケーション力に長けたD課長を同職場の新たな管理職に就かせることになりました。

③職場でハラスメント的な言動を見かけたら、その場でD課長が必ず注意をするようにしました。

各種対策が効を奏し、面倒見のよいD課長の下で職場の雰囲気はよくなり、従業員が同職場に定着するようになりました。また、Aさんも同職場で元気に働けるようになり、メンタル不調者の新規発生もその後は起こらなくなりました。

 このケースでは、職場の雰囲気の悪さ(同僚によるいじめ等)から従業員がなかなか定着しなかった職場において、保健師がコーディネーターとして関わることで、職場風土の改善につながり、結果として離職率の低減を達成することができました。このように産業保健職がメンタルヘルス対策に上手く関わることで、職場の働きやすさや生産性向上につなげることができます。

著者:当社のパートナー
医療アドバイザー(産業医)

OHサポート株式会社
代表 今井 鉄平 (産業医)